
2011年6月18日
2011年度立命館大学経営学部校友会第7回総会、ならびに講演会を開催
2011年度立命館大学経営学部校友会「第7回総会」ならびに「講演会」を、からすま京都ホテルにて開催しました。
総会には、約50名(委任状含む)が出席され、「2010年度収支報告書」「2011年度事業計画」「2011年度予算案」などすべての議案が承認されました。
また、卒業後の校友間のネットワーク形成への取り組みを推進することを目的として、「ゼミ同窓会開催援助制度」についても増額改定が承認されました。具体的には、1人につき3,000円で60,000円を上限とし、参加教員分10,000円の計70,000円となります。
2011年度経営学進行事業セミナーについての開催計画も承認されました。
≪2011年度セミナー開催計画≫
【第1回セミナー 8月28日(日)】大阪:ホテルグランビア大阪
【第2回セミナー 11月5日(土)】京都:立命館大学朱雀キャンパス
【第3回セミナー 2012年2月25日(土)】東京:東京ガーデンパレス
「原発事故の報道に風穴を開ける(Vent)!!」
立命館大学経営学部校友会第7回総会に続いて行われた記念講演会では、この問題に詳しい経営学部教授平井孝治先生による「原発事故の報道に風穴を開ける(Vent)」と題するお話をうかがいました。とにかく、原発問題は今最大のホットな話題で,OB・OG以外の方も含めて、84名の方が参加され、時間オーバーの熱を帯びたお話しに聞き入りました。しかも内容豊富で、準備されたお話しのすべてを聞けなかったのが残念でした。その分懇親会で平井先生を取り囲んで、さらに突っ込んで質問する方が多かったように思います。以下、当日のお話しを要約しておきます。でも素人にはなかなか難しいお話しでしたので、十分伝え切れていないかも知れません。この点予めお断りしておかなければなりません。
津波による電源喪失の前に
まず本題に入る前に、お話ししておきます。早くから原発震災について警告されていた神戸大学名誉教授石橋克彦氏は、今回の福島原発事故では津波被害の前にすでに「冷却材喪失事故(LOCA,Loss of Coolant Accident)が起こっていたのでは」といわれています。石橋氏は参院行政監視委員会に参考人として呼ばれて「東西方向に耐震設計基準を超える揺れがあった。振動の時間が3分くらいと長く、長時間の繰り返し荷重で(原子炉が)損傷を起こしたことは十分考えられる」と話されています。
設計基準事故(公衆の健康と安全を確保するため、原子力施設の設計を評価する目的で、一定の基準に従い機器の破損や故障を組み合わせた想定事故)というのがありますが、今回の地震で福島第一原発周辺では地震の規模から判断すると500ガルの揺れがあったと推測できます。これは設計基準の450ガルを凌駕していたことになります。
政治課題になった三大事象
今回の原発事故にかかわっては疑問点がたくさんあります。政治的問題になった論点は、①海水注入の中断の有無、②菅首相は一定の目途がたてば退陣するというが、「一定の目途」とは何か、③子供の被爆線量はどれくらいまで許容できるのか、の3点です。まず3点目について,お話しします。政府によって今回容認できる「子供の被曝線量」は年20ミリシーベルト(20mSv/年)とされています。これがどれくらいのものかですが、通常、病院などでレントゲン室周辺に放射線管理区域というのが設定されていますが、そこで許されている放射線量は0.6マイクロシーベルト毎時とされています。だから、その6倍の3.8マイクロシーベルトを容認できる子供の被曝線量だというのは、実はそういう放射線管理区域に四六時中晒されているようなものですから,その方針には疑問を懐かざるを得ません。
核分裂・原子炉
原発事故直後、東電本社が福島第一原発からの要員撤退を申し出たのも疑問です。この申し出を押しとどめたのは菅首相の功績です。後年そう評されるだろうと思います。菅首相が押しとどめていなければ,大変なことになっていただろうと思われます。核の連鎖反応が続く状態が臨界、この状態が拡大すれば「核の暴走」です。
原子炉の燃料は今回のものはウランです。減速材である水と冷却材である水によって制御されています。原子力発電で利用する核分裂は、ウランの原子核(235U)が熱中性子(n)を吸収して、より小さい原子核に分裂する核反応です。ウラン235は原子炉燃料としては3~5%で、高濃縮され90%超だと原子爆弾になります。
(注)「ウランやプルトニウムなどの原子核が、中性子を捕りこむ(吸収する)ことなどによって、ほぼ二つ(まれには三つ以上)の原子核(核分裂片)に分裂する現象を原子核分裂という。中性子の吸収による核分裂では、1核分裂当たり2億電子ボルト(=200MeV)程度のエネルギーを放出する。このとき、2個または3個程度の中性子が放出される。それらの中性子が次の核分裂を呼び起こすようにして、連鎖的に反応を継続させながら、放出されるエネルギーを得る装置が原子炉である。」(http://www.aec.go.jp/jicst/NC/sonota/study/aecall/book/pdf/siryou1.pdf)
日本投下の原子爆弾
なお、広島の原子爆弾はウラン型で死の灰1キログラムでそれだけ放射能が放出されました。長崎はプルトニウム型でした。アメリカはこのウラン型とプルトニウム型の2つの原子爆弾を使いたかったので、終戦直前に急ぎ使ったといわれています。
燃料集合体と制御棒
原子炉は12ヶ月稼働させ3ヶ月定期検査のため休止します。今回の原子炉は沸騰水型軽水炉(BWR)-東電、東北、北陸、中部、中国電力がこの型で、北海道、関電、四国、九州は加圧水型原子炉(PWR)です。圧力容器内は70気圧で285℃で沸騰します。このエネルギーを利用してタービンを回し、沸騰した水は冷やして再循環させます。燃料棒(燃料集合体)は休止中に3分の1を入れ替えます。定期検査中でも使う物が残っています。
制御棒はボロン(ほう酸)、カドミニュウム、ハフニュウムです。中性子の吸収材は,水、ボロン、コンクリート、黒鉛です。
水素の再結合、メルト・スルー、(水蒸気爆発)
今回の地震でステーション・ブラックアウト(全電源喪失事故)が起こり、冷却水を注入できず熱を除去することができませんでした。そこで空だき状態になり被覆管が溶解し、溶けた燃料棒の表面では水蒸気が分解されて、水素が発生します。この水素が爆発したわけです。
さらに、燃料棒やペレットがどろどろに解けて圧力容器の底にたまるまでがメルトダウンで、その後さらに圧力容器を突き抜けて熔けたウラン燃料が格納容器の底にたまることがメルトスルーと言うのですが、今回そこまで行ったと考えられます。
怖いのは高熱になったウラン燃料が水に触れて発生する水蒸気爆発です。いまのところ起こってないところをみると大量の水を供給して温度を下げたのが効いたのでしょう。1号機では原子炉の中は水が無くなり空だきになって、すべては格納容器にもれ、そして格納容器も破損して外部に漏れていた(メルトスルー)ようですが、チェルノブイリのように水蒸気爆発に至らなかったのは幸運としか言いようがありません。ベントをしていなかったら水蒸気爆発でもっと広い範囲が汚染されていたかも知れません。
事故評価
今回の汚染はチェルノブイリの20分の1程度、広島原爆の50倍程度だと推測されます。チェルノブイリの1400万テラベクレルと比べて,今回のそれは70万テラベクレルくらいだと考えられます。原子力損害賠償法による賠償額だけで5兆円(すなわち1年間の消費税の税率の2%程度),実際はそれ以上の賠償額になると考えられます。高レベルの汚染水は10.5万トン、廃炉には少なくとも20~30年かかると推測されます。
外部被爆と内部被爆
外部被曝ではマイクロシーベルトだと毎時であり、ミリシーベルトだと年間(もしくは累積)被曝量です(前述の表参照)。被曝限度は,幼児は成人の1/5、1歳未満では1/10で、高齢者であれば細胞分裂も少ないので2.5倍でも可能かも知れません。セシウムはカリウムと間違えて筋肉に,ストロンチウムはカルシウムと間違えて骨に取り込まれ,白血病の原因になります。甲状腺に溜まり易い放射性ヨウ素はわかめ、こんぶなどで一定程度防げます。
今回の事故ではベクレルとシーベルトとの関係(距離の2乗に反比例),半減期などテレビの解説で誤りが多いのが特徴です。反原発派がテレビに出ていない(出してもらえない)のが原因かと思われます。
今回の原発事故「専門家や知識人の無知によるコメントは罰するに値する」ものです。天災についても,影響の極小化は関連する学問の義務ですが、ましてや今回のような人災の多くは関連する学問の責任に帰すると思います。
《編集後記》
今回のお話しは時間不足でもっともっと話してほしかったというご意見が多くありました。
8月28日(日)には「ホテルグランヴィア大阪」において陽明学者安岡正篤氏の高弟であり、また論語精神の昴揚に尽力されています伊與田覺先生のお話をうかがいます。ご期待下さい(M)。

