セミナー・交流会について

経営学振興事業セミナーについてのお知らせです。

次回セミナー・交流会のご案内

立命館大学経営学部校友会 第4回総会・記念講演会・懇親会 開催のご案内

日 時:2008年6月14日(土) 14:15~19:30
場 所:ホテルグランヴィア京都 3F 源氏の間

第1部(14:15~15:15)  総 会
第2部(15:30~17:30)  記念講演会
  演題:「戦争の中のメディア」
  講師:桜井 均氏

<講師紹介>

東京大学文学部フランス文学科卒
NHKで主に教養番組、ドキュメンタリーを制作 元NHKスペシャル エグゼクティブ・プロデューサー
現在 NHK放送文化研究所でメディア研究

※戦争は情報戦でもある。メディアはどんな役割を果たしてきたか。メディアの内側からその功罪(両義性)を見る。
第3部(17:45~19:30)  懇親会〈参加費:3,000円〉

ホテルグランヴィア京都
〒600-8216京都市下京区烏丸通塩小路ル JR京都駅中央口
【TEL】075-344-8888(大代表)【FAX】075-344-4400  http://www.granvia-kyoto.co.jp/

ホテルグランビア京都地図

(事務局よりのお願い)
ご出欠につきましては、6月6日(金)までにFAXもしくは下記メールアドレスまでお願いいたします。
立命館大学経営学部校友会事務局(経営学部事務室内) 西上(ニシガミ) 
TEL:077-561-3941  FAX:077-561-3957
e-mail:nishiga@st.ritsumei.ac.jp

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前回セミナー・交流会の様子

2008年3月1日(土) 第4回経営学振興事業セミナー

佐藤典司経営学部教授
【テレビは生きのびることができるか 於:メルパルク京都】

2007年度第4回経営学部校友会経営学振興セミナーは、2008年3月1日(土)京都駅前「メル パルク京都」において30名の参加を得て開催された。講師に、佐藤典司経営学部教授をお迎えして「テレビは生きのびることができるか」と題するお話を伺った。以下はその概略である。

【経営が苦しくなりつつあるテレビ局】

最新の『エコノミスト』2008年3月4日号特集は「テレビの憂鬱」とうたっています。その意味で、今日のテーマはタイムリーな話題かと思います。ちなみに、『週刊ダイヤモンド』2007年6月2日号にも「テレビ局崩壊」という特集がありました。ですので、タイトルの「テレビは生き延びることができるか」は、あながち誇張ではないかと思います。
少なからずの学生諸君がテレビ局に就職を希望します。そのとき「キー局はよいがローカルは危ないかも」と答えるのですが、なかなか信じてもらえません。テレビ局の経営状態がよくないことは、あまり知られていないのです。というのも、キー局と新聞社は密接なこともあって、こうした報道が少ないのが実情だからです。テレビのことは、雑誌には時々書かれますが、テレビ自体が最大のメディアなので、逆に危機が表面化しないのです。
さて、今日の話の前提ですが、第一に、テレビという言葉は、民放テレビを中心に言っているということと、第二に、テレビが面白いかどうかはおいておく、ということです。テレビが面白くないからではなく、テレビは、ビジネスモデル的に崩壊の危機にあると思うから、というのがその理由です。

【広告依存の問題点】

前述の『エコノミスト』2008年3月4日号に載っている日本テレビの事業収入データを見ますと、収入を広告・非広告別に分けると、その多くの部分が、広告収入で成り立っていることがわかります。これが同じマスメディアでも新聞の場合、半分は販売料収入です。TBSでも広告料収入が中心です。フジテレビは半分くらいに落ちていて、その意味では、フジテレビは、多角的事業構造へ方向チェンジ中といえます。その他キー局でいえば、テレビ朝日、テレビ東京も、広告収入に頼った脆弱な事業構造になっています。
次に、総広告費にしめるテレビ広告の位置づけを見てゆきますと、2007年1~12月の日本の総広告費は7兆191億円です。そのうち、約2兆円(1兆9981億円)、つまり全体の3分の1弱(28%)がテレビ広告費で、しかも近年、テレビのシェアは低下しつつあります。

【視聴率至上主義にならざるを得ない理由】

視聴率至上主義にならざるを得ないのには理由があります。それはテレビの総広告枠は上限が決まっているということです。つまり、一日の時間は24時間しかないということです。広告量を増やそうと思えば,新聞や雑誌なら増ページできます。ところが、テレビは放送時間が、最大でも24時間しかないという制約がついてまわります。これは、情報消費社会の最大の欠点なのですが、例えば、映画に行ったら旅行に行けないなどと、人間の情報消費行動には時間の制約があります。モノの社会でも地球環境の枠内という制約があるのと同じです。結局、互いに人間の持ち時間を取り合うより他ないのです。
テレビでは、予算いくらいくらで、○○GRPという広告発注がされます。GRPとは、総視聴率gross rating pointという意味で、例えば、全国、ワンキャンペーン5億円で3000GRPという発注があるとすれば,視聴率×広告本数=3000ということですから、これは20%×150本でも、15%×200本でも同じです。これが、テレビ局が視聴率至上主義にならざるを得ない背景となっているのです。つまり、視聴率が高ければそれだけ、総枠が限られたCM本数の中から、提供する本数が少なくて済むわけです。良い番組か悪い番組かは主観ですが,視聴率は客観です。そこで、たとえ、良い番組であった場合でも、視聴率の低い番組は生き残れない、という理屈になるのです。

【コンテンツ制作にお金が回らない】

放送局のタイムランク設定というのは、だいたい19時から23時がAタイム、その前後や昼食時間帯が特B、その他がBタイム、Cタイムとなっています。これがスポット時間取りの料金計算の根拠となります。例えば、数年前の料金表ですが、TBSのAタイム15秒のスポットは105万円で、特Bは74万円、Bは42万円、Cは31万円となっていて、全国に放映すれば、この3倍くらいかかります。これはスポット(番組にくっついていない)広告の話ですが、その他に番組提供というのがあります。
番組提供は制作費と電波料からなっています。昨年、問題となった「発掘!あるある大事典Ⅱ」事件について報じられた『月刊文藝春秋』2007年4月号記事によりますと、提供スポンサーの花王の年間スポンサー料金は、約50数億円で、これを1週あたりに直すと、放送1回分の費用は約1億円となります。このうち電通が管理費として15%1500万円とり、さらにネット各局に配布される電波料などが引かれ、関西テレビには約3700万円が渡り、そこからまた、ゲスト出演料、美術費、スタジオ収録費などが引かれ、最終的に、制作プロダクションに渡ったのは、860万円程度とされています。つまり電波料などに費用がかさみ、現場で実際に番組を作る人に、あまりお金が行っていないというのが最大の問題となっています。ところがインターネットの時代、コンテンツの時代になると、番組制作のノウハウ、技術こそが最大の武器となるはずで、その意味でも、テレビ局は大きな課題をかかえていると言ってよいと思います。
以前この業界へ就職したいという学生をテレビ番組の制作会社へ紹介したことがあります。半年間は社員試用ということでしたが、制作会社にもテレビ局にも、この学生はたいへん気に入られました。ところが、半年たって本人から入社を辞退するという連絡があり、その理由として彼があげたのは、テレビ番組が、これほどいい加減な作り方をされているとは思わなかったということでした。NHKの場合は、お金と時間をかけているものも多いのですが、民放では1週間、2週間で作ることも多く、これからのコンテンツ重視の時代にあって、民放各局は、番組制作面でも構造的な問題を抱えていると言ってよいと思います。

【テレビ広告が効かなくなってきている】

1日1人あたりの平均視聴時間が、少しずつですが、減少しつつあります。そうした中、視聴時間の高い人の割合は、高齢者に多いのが実情で、若い人がテレビを見なくなったといわれます。実は、ここがポイントで、テレビの場合、一般的には,若い層、とくに女性が広告対象です。だから若い人が見てくれないテレビはつらいのです。
若い人の視聴時間は、ネット利用が増えたせいで、減少してきています。少し古い調査ですが、一日の若者(18歳~29歳)のメディア接触状況を調べたラジオ局のデータに、ゴールデンタイムの1993年と1999年のそれを比較すると、70%から40%台へと低下しているというデータもあります。
他方『日経ビジネス』によりますと、10代の若者の1日の外出時間は8年前より2時間30分増えて1日9時間30分になっています。アメリカでも家で過ごす時間が20年前の半分になったといわれています。そうした中、コカコーラは2007年のテレビ広告を30%カットして屋外広告を増やしました。外資系企業は、合理的判断をして行動を起こしますので、これは日本のテレビ広告の先行指標と言ってよいかもしれません。

【テレビ広告パワーの低下】

加えて、視聴者がまじめにテレビを見ていない、という問題もあります。9時台にテレビを見ている人の34%はネットしながら見ているという調査もあります。いわゆる、ながら視聴(ラジオのように)です。
また、これもしばしば指摘されることですが、録画されたCMが飛ばされているという問題もあります。2005年の野村総研の調査報告によると、当時のHDRの普及率が15.2%(今はこの数字はもっと高くなっているはずです)、平均録画視聴率が34.2%、CMスキップ率が63.4%ということから、それらを掛け合わせると、2.6%のCMがスキップされているという調査報告が出されたことがあります。この計算の仕方に対するいくつかの反論もありますが、視聴者の実感からしても、やはり無視できない調査報告のように思われます。
CMが面白くなくなった、という問題もあります。世界的な広告作品のコンペティションであるカンヌ広告祭でも、ここ十数年、テレビ広告部門での日本作品の入賞が非常に減っています。理由はいくつか考えられるのですが、バブル崩壊で、スポンサーサイドからの短期的な広告効果に対する要求が厳しくなったことや、コンビニでの販売競争のあおりがあると言われています。コンビニでは、2週間くらい棚において、売れ残り率の高いものはカット対象になり、すぐ売り場から退けられます。その結果、急速に知名度をあげるために、テレビ広告では、商品名・ブランド名の連呼をするしかない、という現状があります。これらに加えて、効率重視ということなどから、15秒CMが主体となってきて、起承転結のあるストーリー展開どころではなくなったという問題もあります。そのため、CMの質は低下せざるをえなくなり、こうした問題は広告代理店の危機でもあると言ってよいかもしれません。なぜなら、CMがおもしろくなくなれば、広告会社に優秀な人材も来なくなるからです。

【インターネットの時代】

商品を購入する際、一番頼りにしている情報はインターネットだという調査結果があります(マクロミル調査2006年4月19日)。さらにネットの場合、強みとして、商品のやりとりから代金やりとりまで直結しているという点があります。
また、ネット広告が注目されている理由のひとつに、バズ(羽音)効果というのがあります。ネットでは、ウワサが口コミ的に次々に伝播されてゆくのです。そのため、広告の役割として、従来のAIDMA(Attention,Interest,Desire,Memory,Action)から、AISAS(Attention,Interest,Search,Action,Share)へと変わってきたと言われています(秋山隆平, 杉山恒太郎『ホリスティック・コミュニケーション』)。例えば,自分が消費したことをブログで書く、そこからまた商品情報広がっていくという動きです。あるクリエイターは、「マス媒体全体がインターネットの第1ページ目である」と言っています。

【結論】

今日のお話をまとめますと、第一に、テレビ離れではなく、むしろテレビCM離れが起こっていることです。ただ、これは冒頭お話しましたように、CM収入に経営の多くを頼っているテレビ局にとって、大きな問題なわけです。第二に、テレビ自体がおかしくなったわけではなく、インターネットや携帯電話などのデジタル情報機器が急速に普及したことや、人々の生活様式が変わってきていることがその原因だということです。そのためには、今後、テレビはワンセグに見られるように、人が外に出れば、テレビも一緒に外に出ることや、放送と通信の本格的な一体化時代にそなえて、自分のところは主としてコンテンツ産業としてやってゆく、などの対応策が考えられます。ただし、キー局は、そうしたコンテンツ制作能力を持っていますが、ローカル局にはほとんどありません。そのため、今後、キー局が実質的にローカル局をその傘下に入れる動きも起こるでしょうし、今後とも目を離さずに見ていきたいと思います。

【《編集後記》】

今回のセミナーはみんなに関心のあるテレビの話であり、終了後の質疑応答も活発でした。つぎは6月14日(土)の総会,講演会(講師は元NHKスペシャル・エグゼクティブプロデューサー、元立命館大学客員教授桜井均氏の予定)、懇親交流会にご期待下さい。(M)。

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