【後編】経営学部教授(スポーツ・ビジネス論) 種子田 譲先生 Yutaka Taneda

【後編】経営学部教授(スポーツ・ビジネス論) 種子田 譲先生 Yutaka Taneda

5月にニューヨークのNFL(National Football League)本部を訪問した。今回が3度目の訪問である。
日本では、日本人選手が活躍するアメリカ大リーグ(MLB ; Major league Baseball)の人気の方が高く、あまり知られていないが、ビジネスの視点から見ると、あらゆる指標でNFLはMLBを圧倒的に上回っており、文字通 り、世界No.1のプロスポーツビジネスを展開している。一例をあげると、NFLのレギュラーシーズンの各チーム試合数は16試合、MLBのそれは162 試合と10倍以上の開きがある。しかし、その放映権料は、1年あたり、NFL約22億ドル、MLB約5.5億ドルと4倍の開きがあり、なんとNFLの放映 権料の額は、国連の年間予算のおよそ2.5倍に相当するのである。

このように、いわばプロスポーツの王道を突き進むNFLは、マーケティングの視点から、恒常的にファンの育成に努め、当該スポーツの振興がNFLの発展に は不可欠であると考え、青少年のフットボールに対する支援を積極的に行っている。さらに、昨年11月、NFLとNFLPA(NFL Players Association)は、共同出資してUSA Footballを設立した。USA Footballに期待される役割は、アメリカに数多いアマチュアフットボール団体とプロ、すなわちNFLとのパイプ役を果たすことである。

それに対して日本では、まだまだプロとアマチュアの間に立ちふさがる壁は高い。たとえば、プロ野球の選手が母校の選手に指導することはできないし、高校の 野球部に所属する生徒がMLBのトライアウトに挑み、処分された。また、日本のスポーツ団体は、基本的に競技団体、すなわち、その競技の競技者の団体で、 意識的にそのスポーツを青少年に広める必要があるのだが、そういう問題意識を持っている団体は、残念ながらそう多くはない。持っていても、どのようにすれ ばよいのかわからない。わかっていても、今度はお金がない。人がいない。

日本のスポーツにこのような現状を生み出した原因を述べ るのは別の機会に譲るが、私は、日本のスポーツがNFLのような優れたスポーツビジネスから学び得るものは、無数に存在すると考えている。また、スポーツ ビジネスが、サービスビジネスの重要な柱のひとつであるという視点からも、日本のスポーツが、必ず変化し、発展すると確信している。

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