【2014年度講演会を開催しました(2014年6月21日)】

過去に行われたセミナー・交流会のご案内です。

【2014年度講演会を開催しました(2014年6月21日)】

2014年度講演会を開催しました(2014年6月21日)

2014年6月21日、2014年度経営学部校友会総会に続いて、記念講演が行われました。
今回は 神戸?月堂 代表取締役社長 下村治生氏による「生活文化創造とスイーツイノベーション」と題するお話でした。80名の参加があり盛況のうちに終えました。プロジェクターによる数多くの写真や資料を使ったお話は大変分かりやすく、生活文化に彩りを添える西洋歳時記に因んだスイーツ開発のお話や、チーム営業、ワークライフバランスの実践など、老舗企業の様々な取り組みについてお話をいただきました。下村氏には続く懇親会にもお付き合い頂き、多くの校友と有意義なひと時を持つことが出来ました。
以下当日のお話をご紹介いたします。

兵庫県No.1ブランド
神戸?月堂は1897年(明治30年)に曾祖父が創業して以来洋菓子の開発・普及に力を入れており、現在までご愛顧頂いているゴーフル(GAUFRE)は生誕87年を迎えています。?月堂にはこれに加えて、レスポワール(L’ESPOIR)というクッキーのブランドがあり、合わせて2,000種類の商品を扱っています。創作和菓子にも取り組んでいますが、全体で年間100種類の新商品を開発し、逆に100種類を廃番にするという新陳代謝を図っています。2014年3月期では、年商100億円、正社員200名。東京・名古屋・広島に営業所があり、日本国内500店舗、米国・中国・香港・台湾・シンガポール・タイ・ドバイなど海外23店舗で販売を行っています。神戸市の西神に1万平米のオートメーション工場がございまして、ここで大半のお菓子を製造しています。工場では、妥協を許さぬ生産管理を徹底しています。

菓子業界全体に目を移しますと、ピーク時には総生産額が5兆円台に達していたこともありましたが、平成25年では3兆1,757億円となっており、近年は3兆円台で一進一退の推移をしております。これを1世帯当たりで見ますと、お菓子の年間消費支出は65,000円程度です。贈答品に占める菓子の割合は増勢が続いており、①菓子35%、②果物12%、③油脂・調味料11%、④酒類9%という順位になっています。手土産や贈り物にお菓子をご利用頂く機会が増えているのは有り難いことですが、そういう場合に必要となるのがブランドです。とくに私どもが立地しております神戸市は洋生菓子購入額(世帯当たり)が全国第一位であり、市場規模も大きいですが競争も激しい地域です。そういう中で神戸?月堂は100年以上の社歴があるということで、神戸市から「老舗の証」の認定を受けています。ゴーフルを87年間続けてきたこともあり、昨年の「全国お土産総選挙」(テレビ朝日)で兵庫県を代表するトップ・ブランドに輝き、かつ全国でも第8位に選ばれています。兵庫県No.1ブランドという地位を大切に守っていきたいと考えております。

生活文化創造
ここ京都にまいりますと、「100年ぐらいでは未だ未だ…」と言われそうですが。今の神戸は明治維新のときの開港文化によって形作られています。旧く遡れば平清盛公が開いた兵庫港が神戸の街を築いたということですが、幕末に勝海舟や坂本龍馬が海軍操練場を開きます。そして神戸港が、長崎・函館・横浜・新潟とならぶ開港5港に選ばれました。これが神戸の街に大きな変化をもたらします。1868~1899年に外国人居留地や異人館街ができました。ここに教会、病院、総領事館、ミッションスクール、国際学校、商社なども建立され、?月堂も1897年に店開きを行います。当然のことながら世界の情報がここに集まり、キリスト教文化とともに西洋の人々の暮らしに根ざした生活習慣(それを記した歳時記)が広まります。西洋歳時記とはキリスト教文化を暦(こよみ)に取り入れたもので、クリスマス(キリスト降誕祭)やハロウィン(万霊節)、イースター(復活祭)などは、すでにご存じのとおりです。実は、西洋歳時記には毎月のように祝祭日があり、その祝祭日の夕食後を彩るのがスイーツなのです。神戸のスイーツ好きは、このような西洋歳時記の普及が根底にあったわけです。

今日の日本は、ものの価値から生活の価値を重視する時代に入っています。生活文化や暮らしを楽しむ時代が到来しています。生活文化の根底には四季の自然や暮らしの風景を織り込んだ歳時記があり、これが生活文化に彩りを添えています。そういうことで神戸?月堂では、スライドにありますような毎月のスイーツを西洋歳時記に因んで開発して、お客様に楽しんで頂いています。実は創作和菓子の方も、日本の歳時記を取り入れた商品開発を進めており、今後こちらも盛り立てていく計画です。

?月堂のおもてなし
神戸?月堂のコンセプトは、①神戸開港文化、②西洋と日本の歳時記、③おもてなし、という3つの要素を重ね合わせたところにあります。次に、お客様をおもてなしするための取組みを紹介いたします。まず2013年、神戸元町商店街にあります本店を35年ぶりにリニューアルいたしました。玄関先の壮麗なシャンデリアには、札幌市のガラス工芸作家・楠本祐弘氏の製作による吹き硝子をふんだんに使っています。ここには、ゴーフルの歴史を伝えるミュージアムも設置しました。親子連れやお孫さんを連れた方には、ゴーフルにまつわる思い出を伝える場となっております。ここにはまた、EU迎賓館専属パテシエでいらしたフランス人のジャン・ジャック・エリッシュさんに常駐頂いており、まるでお寿司屋さんでお寿司を食べるときのように、お客様の注文どおりのスイーツをお出しするというサロンを開設しています。

もう一つのブランドのレスポワールに因んで、2013年4月に開設したのが、『レスポワールBLANC岡本』です。新進若手の建築家・永山祐子さんに建築の総合デザインを頂き、このようにお菓子を形どった全館真っ白な館にできあがっております。開設1年間はここにスタジオを設け、ラジオ番組の発信を行いました。これが功を奏し、大勢のオシャレなお客様に集って頂いています。また、甲南女子大学生活環境学科の学生さんたちと産学連携プロジェクトに取組み、「塩麹ケーキ」や「(野菜・果物入りの)ベジ・フル・ブッセ」という新商品を開発しました。今年はあべのハルカス6階にもカフェを開き、展望台ショップにハルカス・キャラクター・グッズ(缶入りゴーフル)を置かせて頂きました。お陰様で、展望台で最も売れる記念グッズになっています。さらにこの7月には、本店横に創作和菓子専門のショップを開設します。このように、おもてなしの場づくりにも力を入れております。

チーム営業への転換
?月堂では、「彩り豊かな生活文化や暮らしを、お菓子をつうじて皆さまにお伝えすること」をミッションと心得、前進を期しています。とはいえ時代は、必ずしも楽観を許してくれません。競争環境をファイブ・フォース分析で見てみますと、次のようなことが分かります。
まず、
①新規参入者を考えてみると、こんにちでは主婦の方でも趣味が高じてプロ並みの腕前を振るう方が登場しています。神戸はスイーツ好きの街ですから素人といえども油断できません。
②買い手(お客様)との交渉力を考えると、お客様は限定オリジナル品など高度なニーズをお持ちになっていま
す。
③売り手(原材料仕入先)との交渉力を考えると、公定価格である小麦・酪農品などは高値になると大変です。④代替品について考えると、いわゆるコンビニスイーツが台頭しており、これも決して侮ることができません。そして、⑤同業者間の競争は、まさにサバイバル競争に直面しています。このような競争環境の認識から、「?月堂は決して女性の別腹産業でもないし、デザインで気を衒って売っているわけではない。真に競争力ある商品開発が必要である」と思い定めて、社内ではチーム営業の取組を始めています。

百貨店・海外店・直営店・テーマパーク・外商などのチャネル別の営業部隊を、単なる御用聞きから提案営業を行う部隊への転換を図っているのです。これまでの営業スタイルは、「売上不振→責任追及→謝罪→反省→根性確認→叱咤激励→明日も日は昇る」という姿勢でした。個々人の頑張りに依拠した営業をしていたわけですが、今日はこれでは済まされません。チーム営業の第一は、開発・製造・営業という縦割り組織から、これらを横串でとらえた横断的組織へと転換することです。横断的組織が意識を共有し、一体となって「開発=製造=営業」に取り組むように推進しています。このように、「営業に(これまでの)営業をさせるな」と檄を飛ばして、「チーム営業(=顧客に提案する営業)」を推進しています。

「食べるプロ」が自然と満足する
現代の少子化による生産年齢人口の減少は、女性や高齢者の就労を求めています。それにはワーク・ライフ・バランス(WLB)を整える必要があります。経営者にはWLBを嫌う方も少なくないのですが、昨年当社は神戸市長から成功企業モデルとして表彰を受けました。われわれは女性にもパートタイム・ワーカではなく、知識労働者(人財)として働いて貰いたいと考えています。そのため90年代後半には育児・介護休暇規定を整備し、過去20年間に63名の方々にこれを取得いただいています。

WLBで経営参画のモチベーションが高まるなら、そのコストを上回る生産性の向上が見込まれます。ですから当社では、「あなたに何が出来ますか」という問いかけではなく、「神戸?月堂があるおかげで、あなたに何がもたらされますか」という問いかけを行うようにしています。例えば、われわれの生産力では100個しか売れないとするなら、これに販売力を付加して120個売る。さらに、サービス・ケア力を加えて150個売る。そして、それを上回る開発力を発揮して200個売る。このように生産性向上を優先して、仕事のあり方を探求しています。われわれのお客さんは、60年以上にわたってご愛顧頂いている鋭い五感を持った人々です。少しでも気を抜くと、「最近のゴーフルって、味変わっていないかしら」と指摘をいただきます。いわば、「食べるプロ」なのです。そのプロに対して、単に「お客さんを満足させる」という姿勢では通用しません。「お客さんの立場に立って」ニーズを先取りし、その期待を上回ることが必要なのです。それによって「食べるプロ」が自然と満足する、というあり方を追求することが重要なのです。

曾祖父から100余年にわたって築いてきた?月堂ブランドのもとで、われわれは仕事をしています。これを次の100年に向けて舵を切ることが、私の任務だと考えています。私どもは代々事業を継承していますが、その良さは駅伝ではなくマラソンランナーである点だと思います。つまり、先人の思いを汲み、高潔な志を持って、中長期の戦略をとることができるという点です。繰り返しになりますが、「彩り豊かな生活文化や暮らしを、お菓子をつうじて皆さまにお伝えすること」というミッションは、このようなオーナーシップの良さを基盤として実現できるものだと思っています。

私が銀行勤めを辞めて?月堂に入社したのが、1994年でした。その翌年に阪神淡路大震災があり、多くのモノが失い多くのモノを整理せざるを得なくなりました。そこから再び自社の使命を見いだし、立命館大学MBAで理論化して、今日に到っています。お手元にお配りしている私の著作『生活文化創造 ~神戸?月堂これからの100年~』(Life Design Books、2011年)には、本日お話ししたビジョンが記されております。割愛した点については、ぜひ本書をご参照下さい。それから近々、阪神淡路大震災20周年を回顧するTV映画が公開されます。『神戸在住』(2015年1月17日サンTV放映)というタイトルですが、ここに震災を超えても変わらなかった神戸の大事なモノが表現されています。よく仕上がっておりますので、ぜひご覧になって下さい。ご静聴、どうもありがとうございました。

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