【第2回セミナー(マスコミ・識者の常識を疑え!雇用問題の真相)を開催しました。】

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【第2回セミナー(マスコミ・識者の常識を疑え!雇用問題の真相)を開催しました。】

「雇用を改めて考えよう!~日本は不幸せな国か?~」

2013年2月23日(土)東京ガーデンパレスにおいて2012年度第2回経営学部校友会セミナーが開かれました。「マスコミ・識者の常識を疑え!雇用問題の真相」という問題意識のもと、海老原嗣生(えびはらつぐお)氏(広島県雇用推進アドバイザー、21世紀政策研究所コア研究員、京都精華大学非常勤講師)を講師に迎え、データと事例で本当の雇用について語られました。50名の参加を得て活発な質疑応答も行われました。
終了後の懇親交流会も時間の過ぎるのを忘れるほど、会場のアチコチで議論の輪ができました。以下、講演内容の概要を紹介します。

(1)ここ5年間、世間をにぎわせてきた誤った言説とデータ
働人口5400万人の3人に1人、つまり1800万人が非正規だといわれ、そのうち年収200万円以下のワーキングプアが1100万人もいるとしばしば報じられている。それが本当なら、社民党はなぜ比例区で260万票しかとれないのか。それは有権者が恩知らずなのか?住所不定で投票に行けないのか?そんなことはない。逆に、1100万人という数字が問題なのだ。私は、雇用に関する嘘を正していこうとしている。1100万人の中身を見ると、主婦・学生が6割、約600万人、そして高齢者で年金を貰いながら働いている人が2~300万人いる。だから正確には200万人強が本当のワーキングプアである。
欧米では若年が雇われず、猛烈な失業率であるのに対し日本は少ない。それは、「新卒一括採用」が失業率を低めることに貢献しているからでもある。だから欧米では日本の新卒一括採用を評価している報道も見かける。

高齢者は年金で裕福。若者は貰えそうもなくかわいそう、ってほんと?
国民年金は4割が未納で破綻するといわれている。しかし、国民年金は厚生年金や公務員共済と共通の基礎年金だ。これら三つを合計すると、未納者の割合は11パーセントに減る。その未納者も、悪質な年金逃れではなく、法律で認められた免除・猶予者が6%で、恣意的な未納者は5%を切る。しかも、彼らには最終的に年金が支払われないから、未納で年金財政が破たんなどはありえない。
次に、今の高齢者は年金をもらい過ぎという話。まずは年金受給者の実態を見てみよう。年金を月30万円以上貰っている人は、総受給者のうち0.3パーセントに過ぎない。また、月20万円以上貰っている人も16.1%でしかない。年金受給の中央値は月額9万円でしかない。今の高齢者の多くは、農業や自営業、彼らは厚生年金や共済などをもらえず、1階部分のみの年金でしかない。1986年までは中小企業も社会保険加入義務がなく、また、サラリーマンの奥さんへの3号保険もなかった。つまり、1~3階建の年金を満額もらえる人などごく少数なのだ。ところがこうした現実を直視せず、モデル数値でのみで語られるのが実情である。

若者の2人に1人が非正規?
2009年のデータを見ると、若年就業者534万人のうち248万人、確かに2人に1人が非正規社員となる。ただし、非正規社員のうち在学生115万人が在学生バイトである。在学生を除くと非正規は133万人とほぼ半減する。
非正規は派遣解禁で増えたといわれる、非正規には「パート」「学生バイト」「社会人バイト」「契約社員」「派遣」を含むが、派遣はそのうち140万人、10%もいない。
2006年OECD報告が「日本の貧困率急騰」といった。これが世論をミスリードした。そこでは、非正規が増えた、所得再分配がよくないといっている。しかし実際は、ワーキングプアの半数が高齢者であって、非正規は6~7%。たとえば、高齢者で国民年金だけの人は月69,000円で、極貧である。だから高齢者が増えると貧困家庭が増える。しかも、高齢者世帯が急増しており、貧困者数が増加している。高齢者の貧困が全く問題とされていないOECD報告の誤りを正す必要がある。

(2)非正規問題の本質とは?
新卒非正規を問題視する論調が絶えない。しかし、正社員でない人は高齢者に多いのが実際だ。年代別に見ると、ボリュームゾーンは若年でなく、55~64歳が361万人と圧倒的に多い。15~24歳の若者は学生を除くと110万人である。学生を除くと非正規の6割が40歳以上なのである。非正規合計1722万人の内訳を見ると、主婦(52%)、60歳以上(15%)、学生(9%)で、これで8割弱を占めている。働き盛りで主婦でない人の非正規は少ない。
しかも、非正規を学歴差、ジェンダー差でみると、非正規は高卒以下(21.1%)と女性に多い。非正規は若者一般の問題ではなく、学歴や女性の問題である。こちらこそ問題だ。

(3)市場構造を無視して進む、就職論議
大手企業の新卒削減・厳選化という言説が本当か調べてみる。
よく日本企業の海外進出が問題になるが、その多くは製造拠点と販売拠点の話となる。世界進出とともに、近年、本社機能は着実に大きくなっているので、ホワイトカラーの求人ニーズは減ってはいない。そこで、大手企業の大学新卒採用数をみると、86~90年平均9.62万人、91~95年平均11.7万人と比べると、確かに96~00年平均9.44万人と低下している。しかし、01~05年10.6万人、06~10年平均13.52万人と減るどころか逆に増えている。上下変動はあれど、長期的に見れば大手企業は採用を伸ばしている。
ただ、人気ランキング上位企業に関しては、いつだって狭き門だ。大学新卒者約55万人のうち人気100位以内の企業の採用は平均で1.8万人程度。好景気でも2.6万人程度にしか増えない。人気企業は、景況に関係なく、今も昔も超難関である。ここに55万人が押し掛けるから、とんでもない狭き門となる。これはいつでも、だ。ところが、バブル期は誰でも入れた、とか、リーマンショック前は緩かったと、勘違いして語られる。こうしたことで誤解が増幅しているといえるだろう。
就職氷河の本当の理由は、大学の数が増えて、卒業生の数が増えていることにある。就職数はバブル期の29万人から増減はあるものの最近は35万人前後と2割程度増えている。しかし、大学生は6割も増えた。この差が、「氷河」となっているのだ。
なぜ大学生は増えたのか。その裏には、高卒で就職がなくなったからといえるだろう。これがホントの原因だ。それが先ほどの、工場などの海外進出で起きている。良く考えると、大卒求人が減ったからではなく、高卒求人が減ったことの玉突きで、現在の就職氷河が起きたとわかるだろう。とすると、かつて高卒で就職していた人たちが、今はどこで就業できるか、を考えるべき。こうした本質論ではなく、「日本型一括採用がダメだ」「既卒3年後も新卒扱いにすべき」といった無意味な話が議論されている。
しかし、他方で、農業高校、商業高校などのカリキュラムは変わりつつある。ウェブデザインや商業美術、キャド、英語などが入り、今の世の中に合った形の社会人技能が学べるようになってきた。だから今後は高卒就職も改善し、就職氷河が変わるかもしれない。

(4)日本で働く、という意味・意義
日本には恵まれている仕組みがある。まず第1は、転職率はやや上昇しているが、この20年かけて1ポイント、2ポイント(非正規と正規合わせて)上昇したに過ぎない。もちろん非正規の転職率は当然高い。正規はほとんど転職しない。
終身雇用が崩れてきていると言うが本当だろうか?長期雇用者の割合をみると、40歳代はこの間だいたい6割で、50歳代は5割で推移している。決して、急減しているわけではない。

日米の”働く”はこう違います
日米の差を実感してほしい。米国の従業員10万人規模の大企業では、では1日に80名程度の中途採用をおこない、そのために、400件程度面接をしており、1000通以上の応募書類を裁いている。向こうの人事の方は三連休が怖いという。3日もすれば、数千通の応募書類がたまってしまうからだ。それくらい、米国では採用活動が大変なのである。10人従業員がいれば、そのうち毎年2人が辞め、2人が入って来たばかりだから、戦略となるのは6人になってしまう。つまり、「薄い」。日本型の「辞めない」企業は、10人いれば、9人までが戦力となる。この濃さが企業の体力ともいえる。

能力主義・職務主義による働き方の違い
日本の給料は、「人」できまる。典型的な話で、語学学校を例にとれば、英語しか教えられない教師と、英独両方教えられる教師では、後者の方が、給料が高くなる。ところが欧米なら、そんなことはない。3ヶ国語できようが、教えるのは同じ英語の授業となる。ならば同じ仕事だから給料は同じ。つまり「仕事」が給料を決める。
この給与の仕組みだと、英語しかできない人が、わざわざドイツ語を勉強しようとは思わない。一方日本は、ドイツ語まで勉強しようとする。つまり、長期間、腕を磨こうと思うようになる。
次は異動の話。仕事で給料が決まるのなら、営業と企画と経理ではそれぞれ給料が変わってしまう。これでは、給料の低い仕事へは人は動かせない。そこで、欧米では異動というものが会社主導では難しい。日本は、給料は仕事ではなく本人で決まるから、どこでも異動が自由にできる。
結果、日本型だと、たとえば、良いお客を握った営業マンも、異動でシャッフルされて、公平になる。営業に向いていなかった人が、内勤に異動して花が咲くこともある。再チャレンジが社内でできるのだ。また会社的にも、余った部署から足りない部署へ、スムーズに人を移動させられる。そんな良さがある。
次は、人を教えるか教えないか、の差をみよう。たとえば、カーディーラーに経験年数の違う3人の営業マンがいるとする。日本なら、給料は本人で決まるから、能力の高いベテランは、同じ仕事をしていても基本給が高い。そもそも基本給が高いから、後輩を指導する。大切な契約日やクレーム処理などに、先輩が同行してくれるのは半ば当たり前だろう。その分、給料をもらっているのだから。
欧米だと、人ではなく、仕事が給料を決める。だから同じ営業の仕事だと、基本給自体は変わらない。差は、売上台数=成果給でつく。この方式だと、そもそもの基本給は同じなのだから、後輩指導になど力はそそがない。そんなことをして成果ダウンすれば、年収が下がってしまう。それよりも成果アップに力を注ぐ。こんな形で、助け合い教え合いなどにも差がつく。

給与報酬制度の違いが、これほどまでに、働き方を変えていることに驚きを感じはしないか?
今度は、この仕組みが、キャリアをどのように変えるか、を見ておこう。日本企業の現実的な入社後のキャリアは、営業7割、事務2割、他職1割となろう。営業になって売れなくても、折合の悪い上司との組み合わせを変更してもらえたり、顧客の顔ぶれが異なる地域に変えてもらえたり、違う事業に異動して売る商品を変えられたりする。そうするうちに、自分とピッタリの職場が見つかる。異動可能な組織だからこそ、社内で再チャレンジが可能。これが日本のいいところだ。
会社を選ぶとき、「仕事が好きで選ぶべきか、会社が好きで選ぶべきか?」と良く聞かれる。日本型の仕組みがわかれば、もう答えは見えるだろう。仕事で会社を選んでも、仕事は変わってしまう。対して、会社で選んだなら、いくら社内異動しても、どこでも自分が「好んだ」社風・理念が漂っている。だから好ましい。そのうえ、異動で随時再チャレンジが可能。こういう日本型雇用のメカニズムから大多数の一般学生は何となく雰囲気に合う会社に就職し、入社後に自分の天職を見つけていく。それも、自分の知らない仕事を任され、知らなかった才能に気づく、という形で。さらに毎年、後輩社員が採用され、今度はあなたが、先輩として彼らを教える。それもあなたがしてもらったように。結果、若い時から「人を教える」ことで、マネジメントを覚えていく。新卒採用がない欧米だと、中途の「ライバル」が入社し、給料は同じだから、教えるという行為を知らずに年をとる。日本人が、誰でもある年齢になれば、「対人マネジメント」を覚えているのに対して、欧米ではわざわざ、リーダーシップやという研修を設けなくてはならない違いはここにある。

年次管理の好循環
最後に、日本型雇用では、年次管理の色合いが濃いと言います。この効用について、考えてみましょう。銀行の場合を例に考えます。他の職種も似たような傾向にあるでしょう。
年齢と共にいろんな仕事をこなしていく。これに対して欧米では、できる人とできない人に分かれる。日本では、一通りできる。

《編集後記》最近の米国型経営はよい、日本型経営は時代後れだという風潮が蔓延していますが、そんなことはない。日本型経営の良さは厳然とある。これを忘れずに経営することが日本企業の今後の成長には必要だと言うことがわかりました。実は私がアンケート調査した結果からもこれとほぼ同じことがいえます(松村)

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