【第3回セミナー(ユーロ危機の行方と国際通貨制度の変貌)が開催 されました(2012年2月25日)】

過去に行われたセミナー・交流会のご案内です。

【第3回セミナー(ユーロ危機の行方と国際通貨制度の変貌)が開催 されました(2012年2月25日)】


2011年度第1回経営学振興セミナー
2011年度第1回経営学振興セミナー 2011年度第1回経営学振興セミナー 2011年度第1回経営学振興セミナー

2011年度第3回経営学振興セミナー「ユーロ危機の行方と国際通貨制度の変貌」

2011年度経営学部校友会経営学振興事業第3回セミナーは、2012年2月25日(土)東京ガーデンパレスにおいて46名の参加を得て盛況裡に行われました。
今回は、「ユーロ危機の行方と国際通貨制度の変貌」と題するお話しを国際金融評論家の倉都康行氏に伺いました。ギリシャ危機、ユーロ危機がおさまらないなかでの今回の企画は高い関心を得たようで、多数の校友の皆様のご出席を得ることができました。

円安に向かうか 円高トレンドは変わったのかというのが最近のテーマである。しかしストレートには考えられない。為替は相対的である。日本の経常黒字のトレンドが変わったからといって円安に進んでいくといえるのか。日本だけではなく、欧米も変わってきている。新興国通貨との関係では円安になるとしても、ドル、ユーロとでそうなるかは疑問なしとしない。そういう観点を含めてユーロなどの話をしたい。

ギリシャ問題とは何か ギリシャはGDP比160%の公的債務残高を抱えている。なぜかというと税収システムがなってない。国民の内公務員が2割にもなっている。おまけに統計もあてにならない。こうした不信感がマーケットにある。財政赤字だけでなく経常赤字でもある。経済力が弱く、慢性的に経常赤字でいわゆる双子の赤字だ。しかし、ギリシャはユーロ体制に入っているので、勝手に通貨切り下げができない。ユーロ体制に入っているけれども、何でギリシャが先進国かと言う人が少なくない。
そのギリシャが危機に陥っている。そして各国からの支援を受けている。しかも第1次支援(借り換え)でも足りないで、先週第2次支援が決まった。これでGDPに等しい金額を支援してもらっている状態である。2回目の支援は事実上のデフォルトである。1070億ユーロの債権放棄、民間の債権放棄は現在価値ベースで74%引きのイメージである。ECBも参加することになった。ひとまず合意をえて、マーケットが恐れていたデフォルトは回避できそうだ。
議論のなかで明らかになったのは、EU内部の意見対立である。EU内部の南北問題、内部分裂に近い、足並みの乱れが明らかになった。元来ヨーロッパは信頼関係で結びついていたが、ここにひびが入った。

長期化する「欧州債務・ユーロ危機」
第2次支援でギリシャ危機が終わったといえないと、ドイツ財務大臣が言っている。
問題は長引くだろう。GDP比120%の支援でもつらい。しかし、GDPが縮小すれば、130、140%に上昇していく。通貨切り下げなしに、どうやって解消するのか。再びユーロ離脱問題になるかもしれない。
さらにポルトガルその他への飛び火が怖い。ポルトガル自身は、今すぐ資金調達の必要はないが、来年5月にリファイナンスの必要がある。現状ポルトガル国債利回り2桁ということは、借り換え不能のシグナルである。ポルトガルだけで済むかというと、そうはならないという人もいる。
アイルランドも銀行が問題だが、アイルランド自身は経済力がある。資本輸出は回復している。ここまでは波及しないのではないかと思われる。
昨年来、イタリア、スペイン、フランス、へと波及するのではないかということがいわれたが、これは過剰反応だと思う。企業に対する格付けは信頼性が高いが、ソブリン(国債)の場合は一つ二つの指標では決まらない。作られたマーケットパニックではないかと思われる。ヘッジファンドなどが煽っているのかもしれない。そういう反応は行き過ぎではないかと思われる。おそらく、ユーロ危機はギリシャ、ポルトガル、せいぜいアイルランドまでの問題だろう。
ユーロ危機の本質は、1つは実体経済問題である。今年はユーロ圏のマイナス成長が予想されている。もう1つは銀行問題、流動性問題である。この時勢では銀行が自己資本を強化しようとしてもおいそれと応じてくれない。それで貸し渋りなどが起こると、実体経済に波及してくる。流動性不足は何とか抑えられているが、3年間の流動性オペは時間稼ぎである。3番目は、銀行収益の問題、つまり経営不安である。
厳しい要求を突きつけるドイツに各国はノーとはいえない。経済的に苦しいところがでてくる。これは内部対立の火種である。すんなりと問題が片づくというより5年、10年かかる。だから、ヨーロッパは日本以上に苦しい状態だといえる。

ユーロは崩壊するか ユーロはどうなるか。財政統一なき統一通貨はありえないと当初から言われていた。ユーロは強い通貨から問題通貨へ転落した。これは通貨問題を考えることの難しさである。
ユーロ加盟17カ国の通貨はどうなるかといういくつかのシナリオがありうる。(1)現状維持シナリオ、(2)ギリシャなど離脱シナリオ、(3)ドイツ離脱シナリオ、(4)は元に戻るというシナリオが考えられる。
ヨーロッパの理想主義、共同体の理念、エリート層はこれにこだわる。だからヨーロッパの通貨統合は経済問題ではなく、政治問題である。これが現状維持シナリオである。現状、ギリシャなどでは社会不安の問題になろうとしている。これを放置しておいてよいのか。
とはいえ支援ばかり続けられない。そこで、現実主義のソリューションへ向かわざるを得ない。ギリシャ、ポルトガルの離脱シナリオへ向かうだろう。簡単ではない。5~7割のデバリュエーションとなり、銀行の取り付け騒ぎが起きる。そうすると、資本規制へと動く。ただし資本規制をするためにはユーロを離脱しなければならない。かつてのアルゼンチンとは違う。
困難なハードルがある。(2)となる可能性が大きい。(3)や(4)の可能性はないと思われる。(2)が起きるのは2、3年内かと思われる。今やユーロ離脱の協議がEUの水面下でも始まっている。

ユーロ危機に至ったプロセス 前触れはあった。第1幕は2006年米住宅バブル崩壊、2007年サブプライム問題発覚、2008年ベアスターンズ消滅、リーマンショックである。
第2幕はヨーロッパに飛び火し、2009年アイスランド危機、2010年ギリシャ・アイルランド・ポルトガル危機、2011年スペイン・イタリアまで危機が拡大した。
第3幕は2012年で、フランス格下げ・ユーロ崩壊懸念であり、さらに日米にも財政不安があり、その余波を受け新興国の経済成長不安が出、財政・金融政策の限界が明らかになり、保護主義化の可能性が出てきており、イラン核問題など地政学上のリスクが出てきている。
これらは正統性への疑問である。先進国の緊縮財政や金融機関支援は正統か、社会問題化してきている。混沌としている。危機第3幕である。何が正統かわからなくなってきている。
金融の自由化の正統性も同様に問われている。これが危機第3幕である。激震のマグマになってきている。金融自由化には大きなプラスもあったが、負の側面が明らかになってきている。

金融自由化の軌跡 1980年代累積債務問題では、<国はつぶれない神話>で、返せないくらい貸したため、返せなくなった。1990年代に何が起こったかというと、ホットマネー急増でアジア危機となった。その背景に、日本の銀行の資金引き揚げもあった。
2000年代はITバブル、リーマンショック・ユーロ危機となった。<超金融緩和・ROE競争・金融技術>の結果、投資銀行バブルが起き、クロスボーダー取引が急増した。ヨーロッパの銀行は、外国への融資で稼ぐメンタリティがある。ユーロの導入でそれが高じた。為替リスクがなくなり、貸しやすくなった。国はつぶれないという錯覚が、ユーロ危機を生んだのである。
負の側面において銀行の果たした役割は大きかった。ユーロの制度的問題はあったが、「なぜ今か?」というと、金融の自由化、銀行のクロスボーダー取引量が一線を超えたからだろう。通貨危機のように見えるが実態は金融危機である。

現在の通貨体制の評価 外貨準備シェアをみると分かるが、ドルシェアが低下してきている。日本円も低下している。でも国際通貨体制はアメリカが牛耳っている。アメリカは既得権を守ろうとする。金融のインフラとしての強いドルを望んでいるともいえる。ドルも不安、ユーロの再編リスク、人民元もまだまだ未成熟という状況が続きそうである。
ドル不信とドル依存の共存が続く。アメリカのモラルハザードが起こっている。アメリカに有利な状態が続いている。ドル不信は、金融不安となる。新興国のドルに対する考え方が変わってきている。ドルを減らし、金を増やそうとしている。機軸通貨ドルへの疑問がある。基軸通貨はアンカー・カレンシーの翻訳だと思う。金につながっていた頃はアンカー・カレンシーといえたが、今や相対価値でしかない。

ポンド覇権・ドル覇権の共通点 19世紀後半からのポンドと現在のドルの共通点を見ておくと役に立つ。4つある。
1.資金の還流構造である。イギリスの場合インドであった。アメリカにとっての日本(いまは日中)である。
2.資本取引を支える強い金融機関、民間の金融システムが必要。米国金融機関の体力低下がそれに疑問符を呈している。
3.信用プライシングの力が必要である。日本、中国はこれから程遠い。
4.強者の論理によるグローバリゼーションである。帝国主義、軍事力が通貨覇権の裏側にある。
実のところインタナショナルなフェアな国際機関はない。IMF、世界銀行もアメリカが握っている。近未来にそういうものができると思えない。G20しかりである。だからドル支配が当分続きそうである。

強くて弱いドル 強いドルは米国の国益と言いながらドル支援材料は乏しい。ドルが準備通貨の現状、貿易ファイナンスでアメリカの銀行が弱くなると、ドルが手当てしにくくなり実体経済で困ったことになる。

米国経済アップデート アメリカの経済自体脆弱になってきた。今日のアメリカは1980-90年代ほどの力はない。今や、金融依存経済がこわれた。過剰消費依存もこわれた。低成長から抜け出せない今やれることと言えば減税が精一杯である。アメリカも金融依存の限界はわかってきている。そこでもう一回製造業建て直しを考え出している。
第1次産業、第2次産業、サービス産業へという考え方に疑問が出てきている。雇用は第2次産業(製造業)が大きい。長期失業者をどうするかというと、海外の工場を持って帰るしかない。しかし一回手放すと厳しい。これはとりもなおさず日本の問題でもある。

準備通貨システムの行く末 為替予想であるが、今後ドル円で84-85円はあろうが、そのまま100円になるとは思えない。アメリカ、ユーロの本質的な問題がある。ドル・ユーロ併存体制は、続かざるを得ないが弱い。ただ慣性として使わざるをえない。
通貨覇権の逆転には半世紀くらいかかっている(ポンドからドルへの転換)。急激には変わらない。変わるきっかけになる要素、それはアメリカと中国のGDPの逆転であろう。もうひとつは、アメリカの金融の弱さからくる金融危機の再発だろう。
また日、中間の決済で円決済、人民元決済が始まると、影響が出てくる。中国は、工程表を作っている。世界第2、3位経済国がドル以外で決済しようとしている。ポンドが基軸通貨になったのは、イギリス以外の国の間でのポンド使用であり、第3国での使用が準備通貨のレーゾンデートルである。人民元のシェアが高まる可能性がある。残念ながら日本には通貨政策がないから、円建て決済の増加は難しい。
私は決済通貨として通貨バスケットが望ましいと考えている。ユーロの前身エキュー(ECU)という通貨バスケットの実験は、非常にうまくいった。これが参考になるのではなかろうか。

《編集後記》
倉都康行氏のお話いかがでしたでしょうか。2012年度は経営学部創立50周年、経営学部校友会創立10周年を迎え、経営学部校友会もこれを機に飛躍したいと考えています(M)。

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